Interviews: 久保田稔製陶所 久保田剛

2017.02.03 Interview by Kanae Hasegawa big-game, interviews,

独自に開発した多孔質セラミック製のコーヒー用フィルターが海外でも知られる久保田稔製陶所。「2016/」では、スイスのデザインチームBIG-GAMEとともに新たな有田焼づくりに取り組んできた。初めて海外デザイナーとのものづくりを振り返りつつ、今後の有田焼の展望について久保田剛さんに聞いた。

 

- 新たな有田焼として鍋やケトルなどのクッキングツールアイテムをBIG-GAMEと作りましたね。製品となったものを見ての感想をお聞かせください。

彼らのデザインはシンプルで機能的です。サイズや製品の肉厚、エッジの仕上げ、釉薬の質感など細部に渡りこだわりがあります。焼き物の性質上、技術的に作るのは不可能だと伝えれば、理解してくれて設計を変更してくれるなど柔軟に対応してくれました。3人とも謙虚な人柄で人間的にも魅力的な人物でした。

 

- デザインを製品化する上で技術的に難しかったのはどんなところですか?

クッキングポットの製作について、一般的な鍋は上に開いていますが、BIG-GAMEの鍋は台形のように底に行くにつれて広がっています。見た目はかっこいいのですが製作面では非常に困難なものでした。最初はロクロのように回転させながら土を上に上げて成形する予定でした。上に広がっている形状なら問題なく成形できますが逆の形状なのでうまく土が上がりませんでした。このため成形方法を変更し、排土鋳込という方法での成形に変更しました。型を何度も修正しようやく完成したもので今回のプロダクトで最も製作に苦労した商品です。

 

-2016/」は3年に及んだと思います。3年を通してどんなことを得たと感じていますか?

ものづくりの手順というか、どうやったらデザイナーの思い通りのものが作れるかを学びました。今までは先入観もあるし、図面に忠実に作るということをしたことがなかったのです。しかし、デザイナーも考え抜いた上で提案してきているのだから、まずはその形を素直に受け入れ、技術面でのサポートに当たることが重要ということを学びました。会社としては、品質を厳しく見る目が育ちました。釉薬のかけ方、素地の仕上げ(自社で賄っている部分の)の品質管理が向上しました。

 

- これまでは佐賀県からの助成がありましたが、今後、他力ではなく、商品開発から販売促進の方法など一人歩きしていくことが求められます。今後の意気込み、心づもりを教えてください。

BIG-GAMEの製品の中でも特に機能性の高いコップ類の評判が高いと聞いています。今後の売れ行きに期待が持てます。現在は発注に対して納品が遅れている状況なので、生産体制を整え、安定供給できるよう努力したいと考えております。同時にブルーボトルコーヒー向けドリッパーのOEM生産を行っており、コーヒー関連製品は引き続き力を入れていきます。