Interview: Ingegerd Råman
インゲヤード・ローマンはスウェーデンで最も成功したデザイナーの一人です。 長年のキャリアを通して多くの作品を生み出し、 磁器やガラス作品はスカンジナビアのデザインアイコンとなっています。Orrefors、Kosta Boda、IKEAなどのブランドと仕事をしいている彼女の作品は、暖かさと優雅さに裏打ちされたシンプルさが特徴です。インゲヤード・ローマンが、「2016/」での香蘭社とのコラボレーションの喜びを話します。
- このプロジェクト以前に有田とその磁器生産の歴史について何かご存知でしたか?
あるプロジェクトのため5年前に有田を訪問しましたが、最終的にそのプロジェクトは流れてしまいました。そこにあるすべての知識と多くの小さな工場や工房に感銘を受け、有田が美しい場所であることを発見しました。「2016/ project」にお誘いいただいた時、本当に元気になりました。
- あなたの「2016/」コレクションで何が主な挑戦だったか教えてください。
どのデザイナーが何をどの工場で作り上げようとしているのかは、私が有田に来た時には既に考えられていました。私は「ティーセット」を作るということでした。日本はお茶の国ですが、私はお茶を飲みません。ティーセットを作ることを頼まれるのは光栄でしたが、少し心配しました。しかし、慣習に縛られないという意味で私が普段お茶を飲まないことは良かったと思います。
私は大きさが異なるセットを作りたいとすぐに伝えました。ヨーロッパと日本では飲みものの習慣が異なるので。例えば日本では少し大きめのカップが蕎麦用に使われている様子を見かけました。そして、ティーポットを除きすべてのアイテムが異なる用途を持つようにとも考えました。取っ手は最初に破損してしまう部分ですから、カップから取っ手を取ることをはやい時期に決めました。その方が現実的ですし、「飲む」以外の多くの用途に使用できます。
香蘭社は装飾された磁器でよく知られています。しかし私は到着3日後にはすべての装飾を取り除こうと思っていました。彼らは、粘土や形や釉薬、装飾などの知識がとても豊富ですが、私にとっては扱うべき要素が多すぎました。私は最も重要だと思う、形状と材料に集中しようと考えました。
- 香蘭社とのプロセスについて教えてください。
香蘭社に初めて訪れたとき、 決してすることはないだろうと思っていた話をしました。一緒に座って、白色についての話をしたのです。いろいろな白があることを知っている人に会えたのは嬉しい。そのような繊細な目を持つ人を見つけることは期待していませんでした。香蘭社は、多くの世代の知識が蓄積されているのがとても素晴らしいです。彼らはとても細かい部分まで見ています。これは私の手法でもあります。ミリ単位での装飾ですよ。
私たちが同じ言語を持っていなかったとしても、コミュニケーションについてはとても満足していました。釉薬について話し合ったとき、私は光沢のない、艶のある表面を絹のような感じと描写しました。冷たくない、黄色みを帯びない白が欲しかった。私はスウェーデンで最初に受けとったサンプルにとても満足しました。仕事中、テーブルにそのサンプルと共に座ったりして本当に本当に気に入りました。私は大満足でした。その後あらためて有田に足を運びサンプルがある部屋に入った時、同じ釉薬ではないことがすぐにわかりました。何かが違っていました。「これは同じ釉薬ですか?」私は尋ねました。そして釉薬の匠は、「よく気がつきましたね。粘土との適合性を高めるために少し変更を加えました。」と。彼は私が気づいたことに驚きました。私はもう一度やり直すことをお願いし、彼らは改善を加えました。このように一緒にやってきたのです。
- あなたはガラス工場での作業など業界やメーカーと協力して作業してきた経験があります。また自身のワークショップでは、自ら磁器を作っています。 ふたつの異なる作業はどのようなものですか?
それは大きく異なるものです。 私はガラス吹きの匠や陶器職人と協力して行うプロジェクトが大好きです。 デザイナーは、 精神を集中し形を作ります。また、周りのすべての人々に耳を傾け、何が可能かを見極め、細部を変更します。それは双方に相乗効果をもたらします。それらの意見に耳を傾けることはデザイナーとして非常に注意することです。周りの人々はデザインをより前進させます。私はこれが大好きです。 休みをとって自分の陶器を作ることも好きですが、職人なしで物を生産することはできません。
-「2016/」のコレクションは、あなたのデザイン精神または他の作品と通ずるところがありますか?
すべてのプロジェクトについて、私は自分自身が欲しいと思う究極のものを作ります。私にとって完璧な使い心地で、既にテーブルの上にあるものと合わせやすく、周りに置きたいものであれば、そのデザインは調和し私を反映したものでしょう。ユーザーはその作品の背後に誰かがいるような気がするでしょうし実際にいるのです。
私はいつも、信じていない製品を作るようなら、糊口を凌ぐ方が良いと思っていました。人々は私と働くことは難しいと思うかもしれませんが、自分がが欲しいものを知っているだけです。このプロジェクトの美しさのひとつは、誰もが良い結果を望んでいたということでした。とても良い雰囲気でした。メーカーは彼らの知識を持っていて、私は私の知識を持っている。誰もが同じポイントに到達したい夢があります。
- 最後に、有田の永続的な印象はどこにあるのか、その場所、人々、磁器産業について教えてください。
「2016/ project」で有田に来たとき、私は自分の商品が何であるかという夢を見ました。いつもそのような夢を持っていますが、めったに達成されません。 しかし、これは本当に私が夢見てきた製品です。 有田には知識の量が多く、「2016/ project」はユニークです。 製品だけでなく、アイデアも。 その成功を心から望み、再び香蘭社の人々と仕事をすることを祈っています。