Interview: Kueng Caputo

2016.10.12 Interview by Kanae Hasegawa interviews, kin’emon toen co., ltd., kueng caputo

サラ・クーンとロヴィス・カプートは、共にスイスでインダストリアルデザインを学び、学生時代から共同で作品制作を手がける。以来、控えめであり即興性があるという芸術性の高いコンセプチャルな手法で、様々な領域でコミッションワークを手がけている二人に2016/での挑戦について尋ねた。

 

有田焼のどんなところに興味を抱きましたか?

有田焼は分業によって成り立ってきた産業です。自動車を作るような分業体制で工場生産されてきたわけですが、実は分業の一つ一つの過程においては、機械よりも人の手が多く関わっていることに興味を持ちました。そして人の手による工程には手作業でなくてはならない理由があることを教わりました。

 

錦右エ門陶苑と新商品の開発を行う上でどんなことを念頭に置いたのですか?

錦右エ門陶苑の山口幸一郎さんも私たちも色に対するこだわりが強い。ですからおのずと錦右エ門陶苑の職人さんたちのこの色使いの妙を引き出そうと思ったのです。

 

そうして誕生したコレクションのタイトルをあなたたちは「As If – ceramics」と読んでいます。セラミックであるかのように、と解釈できます。どのような意味を込めたのですか?

As If – ceramics」は人の目の錯覚をデザインに取り込んでいます。錦右エ門の得意とする釉薬がテーブルウェアやテーブルアクセサリーの表面に影のようなグラデーションを生み、それを見るとどこからか光が当たって影を落としているように見えるのです。通常、凹凸があって光を遮るものがあるから影が生まれるのですが、この作品は、器やベースの表面がつるっとしているのに影が。。。不思議に思うわけです。この目の錯覚で遊ぶために光と影の要素だけを釉薬で出したいと思いました。しかし釉薬というのはガラスの成分が入っているため、周りが写り込んでしまいます。そこで絵の具屋さんにお願いしてガラス成分を含まないマットな色の釉薬を特別に開発してもらいました。絵の具屋さん泣かせですね。ガラス質がない釉薬では焼き物に強度を持たせることができないのですから。

 

錦右エ門陶苑の強みは何だと感じましたか?

山口さんの釉薬の吹き付けは神業です。錦右エ門でしかできないこの吹き付け技術によって焼き物の表面に「影」を作ることができたのです。日本語を話すことができない私たちと英語が得意でない山口さんですから、コミュニケーションは容易ではありませんでした。それでも釉薬で思い通りの影をつくることができたのは双方が自分の考えていることと相手の考えていることの接点を探ろうとしたからだと思います。

そして、デザインマネージメントに関わるダビッドやよりこさんのサポートも不可欠でした。

 

デザインを形にする上で障害となったことなどありますか?

焼き物の開発には時間を要します。試作にしても成形、乾燥、焼成、釉掛け、本焼きと工程は同じですから1週間かかります。加えて私たちが拠点を置くスイスは日本から遠く離れているため、様子を見たいとき、意見を求められているとき、すぐに現場に行くことができません。ポーセリンというのはその場で触りながら形を決めていく素材なので製造中の現場にいないということは見逃してしまったものも多かったでしょう。

 

磁器のデザインをすることはどんな挑戦だったのでしょう?

どんな素材もその素材ならではの特徴があります。だから一つの素材について昔から行われている作り方を学ぶことはすばらしい。有田焼について学べたことはかけがえのない経験であり、見たこと、知ったことがそのままデザインに生かされました。