Interview: Christian Haas

2016.03.07 Interview by Laura Houseley christian haas, interviews

クリスチャン・ハースは、世界中のさまざまなブランドやメーカーの家具やインテリア、プロダクトデザインを手がけている。また、陶磁器に関わる仕事の経験がとても多い。しかし、ハースはこの2016/ プロジェクトに対しては、自分がすでに持っている知識に影響されないよう新たな考え方でアプローチすることにした。彼が手がけるシンプルでエレガントな日常のアイテムの背後には、どんなインスピレーションが隠されているのか、彼のデザインの中に日本文化がどのような役割を果たしているか語ってもらった。

 

陶磁器関連の仕事では、過去にどのような経験をしてきましたか?また、そのスキルは今回のプロジェクトに有効でしたか?

わたしは食器のデザインを多く手がけてきました。この経験が、今回このプロジェクトに招かれ参加することになった一つの理由ではないかと思います。食器の製造やデザインの経験は、どんなものであれば作れるか、逆にどんなものだと作れないかというアイデアを与えてくれるのでとても役に立ちます。ただ2016/では何かこれまでと全く違うことをしてみよう、すでにある境界を押しのけようと思っていました。初めて有田を訪れた時、陶磁器の製造のことについては何もしらないふりをしました。自分のスキルをちょっと無視ししてみようと思ったのです。なぜなら、自分がこれまでやってきたものとは違うコレクションにしたかったからです。

 

有田で行われている磁器製造について、何か驚いたことはありましたか?

とても驚きに満ちたものでした。2016/ のコレクションが量産されることは知っていたので、もっと工業生産的なスタイルだと想像していました。でも実際には、有田では多くの製造過程が人の手で行われていることを知りとても驚きました。私の過去の経験から言うと、工業製品の製造過程はだいたい機械化されていて、人がものに触れるようなことはありません。ただ有田では多くの人が各工程に携わっていて、土が作られるところから最終の仕上げまで非常に工芸的な仕組みが残っています。みなさん非常に勤勉で、情熱を持ち、様々な人々が協力し合って魅力的な仕事をしています。こんなことは想像もしていませんでした。

 

あなたは、有田の中でももっとも経験を持った宝泉窯と仕事をしていますね。宝泉窯は、最近では1616/ arita japanのコレクションも手がけているので海外デザイナーとの仕事の経験もあります。それらは役に立ったのでしょうか?

とっても役に立ちました。海外デザイナーと仕事をした経験があることもそうですが、宝泉窯はとても有能な生産体制を整え、テーブルウェアを量産できる高度なテクノロジーを用いています。彼らの献身さにはとても感謝していますし、とてもオープンな心の持ち主でした。

 

有田に来る際には、何かアイデアをもって来たのでしょうか?

ヨーロッパのマーケットにもアジアのマーケットにも、どちらにも合うテーブルウェアを作ろうということは考えていました。ただそれ以上には、有田に行く前にあまり考え過ぎないようにしました。というのも、そこで発見した技術や可能性からインスピレーションを得たかったからです。

 

あなたのコレクションについて、キーとなる要素について教えて下さい。

コレクションはとてもシンプルです。わたしはアジアのテーブルセッティングとヨーロッパの食器の使い方を学びました。このふたつは全く違うものですが、形やサイズを見るとそれぞれの使い方にちょうどあてはまるものもありました。たとえば、私たちがヨーロッパでブレックファストプレートと呼ぶものは、アジアではダイニングプレート、もしくは取り分け用のお皿として用いられています。プレート、ボウル、コンテナなどはお互いに準ずるものとしてマルチに機能します。すべてのアイテムの底の部分には記号が描かれています。何かしら特別なディテールを加えたかったのですが、日本でもそうであるように、すぐに分かるようなものはいやでした。何か洗練された、エレガントだけどファッショナブル過ぎないものを作りたかったのです。わたしたちは雑誌などであまりにもたくさん特別なデザインを目にしています。それは素晴らしいことですが毎日使うというものではないかもしれない。毎日使うものを作る責任を自分自身も感じていたし、それを求められているとも感じていました。有田は成功を必要としているのです。

 

多くのデザイナーが、商業的に成功をするプロダクトを作る事に関しての責任感について語ってくれました。あなたもプロジェクトスタート時から感じていたことでしょうか?

もちろんです。これは一般的にデザイナーであれば持っている責任だと思います。この有田のプロジェクトで、商品が認められ注目されるようになるのはもちろんですが、その背景としてこのプロジェクトにはたくさんの人々が関わり仕事をしています。だから商品は売れなくてはなりません。

 

シンプリシティや謙遜などといった日本文化における要素から、何かインスピレーションを受けましたか?

私のコレクションはシンプルさと驚きを同時に持ち合わせています。工学的で複雑な幾何学的形状を持つアイテムですが、 微細にあまりはっきりとは見せない方法で装飾されています。 たとえば、素敵なジャケットを買った時に、インナーのラインが美しいとかそういったささやかなことです。持ち主にこの小さな喜びを感じてもらえたらと思い、微細なディテールを加えました。