Interview: David Glaettli
2016/ projectは、多数の窯元、と商社、デザイナーが連携し、開発を手がける事業。それらの間に立ち橋渡し役を務めるのが、ダヴィッド・グレットリ。彼は2013年3月からカリモクニュースタンダードのクリエイティブディレクターとして活動するなど、京都を拠点にデザインディレクションの仕事をしている。2016/ projectで彼が果たす役割は、デザイナーの願望とメーカーの可能性をまとめていくこと。そんな彼は、このプロジェクトを誰よりも内側から見る権利を与えられていると言える。
- 2016/ projectにおいて、デザインディレクションに課せられているものとは?
クリエイティブディレクターの柳原照弘やショルテン&バーイングスとは、プロジェクトのディレクションやデザインのディレクションを通し、密な関係で仕事をしています。一緒にデザイナー選定もしました。デザイナーの選定時にはとてもわくわくしました。ブランドの概観をはっきりと描くためにも、様々なグループを選ぶことがとても大切でした。デザイナーの国もさまざまです。さまざまな国で活動するデザイナーが、彼らのホームグラウンドで2016/ アンバサダーとして振る舞ってくれたら、世界との距離はぐんと縮まります。
初めに私たちはプロジェクトブリーフを制作しました。これは、デザイナーに対して2016/というブランドの目的を共有しモチベーションを上げ、1人1人に責任を持って臨んでもらうためのものです。各デザイナー毎に制作し、2016/というブランドが生み出すプロダクトのカテゴリー、価格帯、製品の用途などを提示しました。そこに記したことは全て、日本では商社と窯元と、ヨーロッパではデザイナーとディストリビューターと小売りと、それぞれ打合せを行い発展させていった内容です。
デザイン開発がデザイナーとのディスカッションとデザインの見直しの段階へ進んだ後、技術や手法、そしてパーソナリティーなどを鑑みながら、デザイナーと制作を担当する窯をどう組み合わせるか考えました。そして現在は商品開発の段階にきています。
- デザイナーの仕事を解釈し、製造をするメーカーの手助けをする... 非常に責任の大きい仕事ですね。
はい、ですがとても落ち着いて進めることができています。私はデザイナーが何をしたいのか理解しています。一番心配なのは、窯元がデザインを気に入らない場合ですが、幸運にもこれまでそんなことは起きていません。窯元はこのプロジェクトに対してとてもモチベーションが高く、非常に熱意を持っています。たとえ窯元がコンテンポラリーデザインの世界についてあまり良く知らなかったとしても、彼らはその見慣れない、ミステリアスなプロダクトにしっかりと目を向け、全力を傾けようとしています。
どの国においても、デザイナーと職人の間には文化の違いが見受けられます。このプロジェクトでは、その差に加え大陸も違えば彼らの持つ文化的な背景も大きく違います。私はその間に立って双方について熟慮し、何が必要なのか?ということを両者に説明しなくてはなりません。
- あなたの目指す、最終的な商品のクオリティとは?
現在の有田焼のクオリティを伝えるプロダクトであり、他のどこでもない有田の地でしか作れないものにしなくてはならないと思っています。クラフトと大量生産、その間に位置することが有田焼を何か特別なものにしています。量産の技術を取り入れる一方、非常に美しい手作業の部分がたくさん残っている。スペシャリストの手業を利用すると同時に、量産・量販できるものを作ることができる、これは重要なことです。
- 16組のデザイナーが用いるさまざまな技術や製造のプロセスについての見識は、あなたが一番持っているのではないでしょうか。デザイナーたちはどのような技術を用いようとしていますか?
幸いにも、それぞれのデザイナーが注目するものが少しずつ違います。同じオブジェの中で薄さの違いを生み出そうとしたり、逆さまに焼成することで全体に釉薬をかけたものが作れるかに挑戦したり、有田で開発された非常に強度が高く耐熱性のある特別な陶土を使うデザイナーがいれば、通常は水のフィルターとして使用されている多孔質セラミックを何か新しいものに適用できないかと考えるデザイナーも。他には、伝統的な下絵の色の新しい使い方を考えてみたり、伝統的な形やパターンを引用したり...などさまざまです。
- このデザインと製造のシステムが有田で継続すると確信していますか?
プロジェクトが始まった頃に比べると、有田の人々は落ち着いた良い状況でデザイナーと一緒に仕事ができるようになっていると思います。デザイナーとのコラボレーションがうまくいく方法を確立し、2016/ の商品が売れそれが続くとしたら、もっと多くのデザイナーが有田に来るでしょうし、もっと多くのブランドが世界中からものづくりをしたいと有田を選ぶようになるでしょう。(すでにHAYやGEORG JENSENなどがショルテン&バーイングスのコレクションを有田で製造しています)有田を世界へと近づける、これは重要なゴールです。