Interview: Kirstie van Noort
カースティー・ファン・ノートは、自分自身のことをデザイナーというよりむしろリサーチャーだと考える。2016/ でカースティーは、彼女が行っている徹底した素材の研究方法を有田に持ち込み、ここで行われている磁器産業に応用している。
- あなたは仕事を始める前に、磁器の製造について学んでいました。そのことについて少し話を聞かせて下さい。
有田のプロジェクトを始める前、私はイングランドのコーンウォールにいました。そこで行われている産業について驚いたことは、生み出される廃棄物の割合でした。コーンウォールでは、1キロの磁器を作るために、6キロの廃棄物が生まれます。私はこの廃棄物を利用したプロジェクト(最後の2枚の画像参照)を考えました。2016/ のクリエイティブディレクターはそのプロジェクトを知り、同じコンセプトを有田に持ち込んで何かできないだろうか?と私をプロジェクトに招いてくれました。
- 有田で行われている磁器製造は、イングランドで見てきたプロセスと似通っていますか?
いいえ、まったく違います。有田では、廃棄するものはほとんど出ません。有田で扱っている土には不純物が混ざっておらず、とても特別なものなのです。有田に長く滞在している間に、さまざまな窯元を訪ねましたが、どの窯でも廃棄物はほんの少ししか出していませんでした。ですから私は、どのようにして自分のコンセプトをこの状況に当てはめていくかを考えなくてはなりませんでした。
- このプロジェクトに対するあなたの考え方は、2016/ に参加している他のデザイナーたちのものとは非常に異なるように思います。有田の職人達はあなたがたどるプロセスをどのように考えたのでしょうか?
当初、説明をするのにとても苦労しました。そして、私はまだ若いですし、これが初めてのコミッションワークであり、日本に来たこと自体が初めてでした。だからこそ興奮もしましたし、一方でとてもナーバスにもなりました。でも、わたし自身が陶芸家であるということが、自分のことを説明するときや、有田の職人のみなさんの働き方を理解するときに役立ちました。私には私のやり方があり、彼らにも彼らのやり方があります。でもプロジェクトを通して私たちはお互いの事を学んでいきました。
- あなたが一緒に取り組んでいる窯元のことを少し教えて下さい。
私が一緒に取り組んでいる窯は、原料を実験的に扱うことで有名な伊万里の窯です。量産用の窯のとなりに小さな窯があり、毎週土曜日に火を入れ実験を行いサンプルを焼きます。研究的なアプローチ、それがわたしたちをつないでいます。
- 製造プロセスの調査があなたの仕事の核心なのでしょうか?
私の仕事のほとんどはコンセプトに関することです。完璧な形を見つけることにとらわれるより、プロセスを通してストーリーを語ることの方が好きです。
- あなたにとって、磁器特有の魅力とは何でしょうか?
私はデザインアカデミーアイントホーヘンで学び、そこには素晴らしい先生がいました。その学校で私は初めて磁器を扱いました。わたしにとって磁器は魅力的。磁器を制作する際の技術的な要素や、石の粉が泥になり液体になり、そしてまるで石のようにとても硬くなるという変容を楽しんでいます。もちろん磁器を扱うのはとても難しく、素材の実験やそれをうまく扱うためにはチャレンジの連続でした。でもそれが今、私がこの素材を使って仕事を続けている理由だと思います。