Interview: Leon Ransmeier

2016.09.28 Interview by Kanae Hasegawa hataman touen corporation, interviews, leon ransmeier

畑萬陶苑との協働でテーブルウェアのコレクションに取り組んだ米国のデザイナー、レオン・ランスマイヤー。オフィス用の家具やレストラン向けチェア、グラス製品など、ツールとしてのプロダクトを多く手掛ける彼に、畑萬陶苑とのプロジェクトで心がけたこと、目指したことについて尋ねた。

 

- 有田焼の作り手たちの仕事をつぶさに見る中、彼らの持つ様々な技と知見に触れたと思います。そのうえで、「ツール」という切り口から「2016/」のアイテムをデザインした意図についてお聞かせください。

テーブルウェアを持ったときの気づきや、ときめきのような感覚を大切にしたかったんです。ですから、手になじむように扱いやすいことはもちろん、持ったときうれしくなるような形を目指しました。ツールとは、大雑把に言うと「特定の作業を行うために手で使うもの」と定義できるでしょう。コーヒーポット、ティーポット、花器のハンドルにはこのツール的な要素が明らかに見られます。そして、プレート、ボウル、カップの底をとってみても、同じようにツール的な視点からデザインしています。(高台を省いたのは)人間工学の視点からそうした形にしたのではなくて、持ったときに扱いやすく、なおかつ使いかたを限定しない形を探していく中から生まれたものです。

 

持ったときの扱いやすさとツールとしての実用性を融合する上でどんな点に気を使いましたか?

人をハッとさせ、能動的にするもの・かたちに関心があります。心地よさというのはその時々で変わってくるものであり、持ったときに違和感がないことが大切、という場合もあるでしょう。たとえば通常、お皿やボウルを持ち上げると底の高台部分の凹凸が気になるかもしれません。高台を付けているのは、釉薬をかけた磁器を窯で焼成する際、底面全体の釉薬が棚板にくっついてはがれないようにするための便宜上の理由からです。製造上、作りやすいからというのは、使う側からすれば関係ないことですね。そういう意味では、「2016/」のテーブルウェアは使う側にとって使いやすい、しかし作る側にとっては苦労するデザインになっているんです。

この使いやすさと作業性の関係に関心があります。チェーンソーやハンマーのような手で使うツールは反復作業を行うため、ハンドル部分にはずっと持っていても疲れない使いやすさが求められます。同様に作業椅子も座り心地の良さを追及してデザインされています。これまで西洋ではどちらかと言えばテーブルウェアに見られる日用品の使いやすさよりも、労働を快適にするためのデザインに注力してきた気がします。

 

-2016/」のテーブルウェアは畑萬陶苑が得意とする極薄の磁器というよりは、厚みのある磁器に見えます。

見た目より薄くできています。おおむね3ミリメートルの厚みです。コーヒーポットなどのハンドル部分は持った時に安定感を持たせるために大きめに作ってありますが、実は空洞です。薄くて繊細なティーカップやワイングラスは使う時に特別な気持ちにさせてくれ、美しいものですが、使うときに気を使うものよりも、使いやすいものであることが重要だと思いました。

 

-2016/」を通して目指したことは?

2016/」は焼き物の歴史、および文化的に重要なプロジェクトです。新商品の開発に身を投じた有田焼の窯元および商社にとっては今後の存亡をかけた一大プロジェクトでもあります。私としては使う人が楽しんで使ってくれて、その結果、生産者にとってもよい結果をもたらしてくれることを願っています。