Interview: 藤巻製陶 藤本浩輔

残された資料によると、1775年には有田での開窯が確認されている磁器の窯元、藤巻製陶。その磁器の特徴は青みがかった独特の釉薬を施した「青白磁」にあり、藤巻製陶と言えば「青白磁」と言われるほど藤巻製陶のアイデンティティを表している。このほど第10代目に就いた藤本浩輔さんはこれまで陶芸作家として個人の創作活動を行ってきた。歴史ある会社のかじ取りを任された今、その歴史とどのように向き合おうとしているのだろうか?そして、どのような思いで「2016/」への参加を決めたのだろうか?藤本さんに話を聞いた。

 

- 200年以上続く窯元です。これまではどのようなアイテムの磁器を作ってきたのですか?

6代目は日本の産業や起業を推進するために開催された勧業博覧会に白磁竹籠花瓶を出品し三等賞を獲得しています。この時期は大皿や鉢物を作っていました。その後、絵画・彫刻の才にあふれた7代目の時代には絵画的、彫刻的なアイテムが増え、装飾性の高い磁器を手掛けていたと言えます。大正期には銅板染付といって、銅板を絵柄通りに彫刻し、その銅板を使って紙に印刷し、紋様の写された紙を器面にあてて絵柄を写す装飾法による器を多く生産していました。

 

- 今では藤巻製陶と言えば「青白磁」のイメージが強いようですが、青白磁はいつ頃生まれたのですか?

「青白磁」は青みがかった釉薬を施した磁器のことを指します。昭和40年代、私の父の代に生まれました。製造工程で最も神経を使うのは生地作りと窯焚きです。青白磁はほかの磁器よりも釉薬を厚めにかけます。厚めに釉薬を施す事で焼き上がりの青さの濃淡が表れます。この濃淡による表現が最大の特徴ですが、釉薬を厚くかけると通常の厚みで釉掛けした器と比べて重くなってしまう。その分、青白磁の器は生地は薄く作っておく必要があります。しかし、生地を薄くすると生地の乾燥時に亀裂が入りやすく、釉薬を厚くかけるために窯での焼成時や冷却時に割れてしまう可能性があり、最も神経を使う工程なのです。

 

- 時代の求めに応じて、藤巻製陶はその都度、商品を見直し、作り方も変えてきたように思えます。200年という年月を歴史に終わらせる事なく、未来につないでいくために心がけていることはありますか?

続けていく・続いていくという事は、変化し続けていく事だと思っています。藤巻製陶代々の窯元の担い手がそれぞれ時代に合わせて作ってきた商品も技法も変化してきています。有田では古くから分業体制が採られてきました。つまり、生地の製造を外部に委託している窯元が多い中、藤巻窯では自社で行う為の設備を有しています。生地製造の能力に磨きをかけ、様々な成形の依頼に応えられる体制を整えていく事が、私の代での変化であり、チャレンジだと思っています。

 

- その成形にはどのようなこだわりがあるのですか?

石膏の型に陶土を流し込む鋳込み成型の手法をとっています。量産に対応すると同時に、人の手では難しい薄い素地を均質に作ることができます。

 

- 最近は海外の有名メーカーからの発注も多いと聞いています。

現在は自社オリジナルが6割。残り4割が他のブランドからの発注です。ジョージ・ジェンセンからの依頼の磁器もここで焼いています。

 

-2016/」ではどのような新しい取り組みが進んでいるのですか?

釉薬に異物を混ぜ込むんです。規格外品の磁器を粉砕して釉薬の中に混ぜ込むという、これまで誰もやった事のない表現に挑戦しています。また、焼成時、稀に起きてしまう釉薬の縮れを意図的に引き起こす事にも挑戦しています。いずれもこれまでの常識では欠点として避けるべき現象。逆にそれを装飾として取り込んでみたいのです。しかし、従来はこうした現象が起こらないようにする方法を探ってきたため、参考になるデータが産地内になく、手探り状態で進んでいます。