Interview: 幸右ヱ門 溝上哲也

2015.12.07 Interview by Kanae Hasegawa interviews, , pauline deltour

2016/」に参画している窯元の一つ、幸右ヱ門窯。江戸末期に創業し、料亭向けの蓋物を中心に、手描きによる染付・染錦などの精緻な絵付けを得意としてきた。しかし「2016/」で幸右ヱ門窯が取り組んでいるのは絵付けを生かしたものではなく、磁器の厚みにポイントを置いたものづくりだ。代表取締役の溝上哲也さんに「2016/」でのチャレンジについて尋ねた。

 

- 置かれている商品を見ますと、幸右ヱ門窯の器には薄いものが多いんですね。

割烹店向けの食器ですから、一度にたくさんの器を運ぶ上で軽いことが何より重要です。それと同時に運んでいるときにカタカタ音を立てないこと。ですから蓋のついた食器はどれもピタッと収まり、器と蓋のへりに遊びがないようにできています。こうした点を高く評価され、今までやってきました。

 

- 有田焼の窯元5社と共有する設備で生産されているんですね。特殊な環境ではありませんか?

施設を共有することは設備投資の負担を軽減することにもなりますが、窯元同士、できた商品を隠しこむのではなくて見せ合うことができるという点が重要だと思っています。どこかの窯元の作った器がヒットしているとします。売れているデザインだったら私たちも真似しようとみんなが追随してしまってはみなが同じ方向に向かってしまい、パイの取り合いになってつぶれてしまいます。そうではなく、ほかの窯が何を作っているかを知ることで、だったらこっちはこんなものを作ってやろう、と切磋琢磨しながら成長してきたのだと思います。

 

- そうした中、「2016/」に参画して新しい商品開発に取り組んでいるわけですが、手応えはありますか?

幸右ヱ門窯は絵付けの妙を評価されてきた窯元であり、売れ筋の大半も絵付けを施した食器です。8人の従業員はほとんどが絵付け職人です。しかし、「2016/」では絵付けではなく、箇所によって厚みが異なる形を作ることができる当社の技術を引き伸ばす商品づくりに取り組むことになりました。人がいないので私がかかりっきりですが、学ぶことばかりです。

 

- 器の縁部分と底部分で厚さは異なるのに、同じ温度で焼成するわけですから、コントロールが大変だと思います。どのような製造方法を取られているのですか?

土を型に入れて機械の力と速度で土を伸ばしていく成形手法を取っています。が、最も気を遣うのは焼成ではなく、生地の段階での形づくりなんです。たとえば、底部分は22ミリの厚みで、縁部分は4ミリの器を作ろうとすると厚みのある箇所は乾かないんです。その上、1300℃という高温で急激に焼成するものだからひずみができてしまう。試作品づくりでは、素焼きの段階で炉の中で爆発して、厚みのある高台が飛んでしまうことも何度もありました。そのたびに厚みを微調整することで学んできた感じでしょうか。デザイナーの要望に面食らうこともありますし、頭を抱えることもあります。そんなとき、商社が工場で試作品づくりに立ち会い、私と同じくらい悩んでくれる。「2016/」では商社も同じ意識で商品開発に関わっています。「2016/」は私たちにとって手探りで進めていることもあり、とても不安ですが、同じステークホルダーとして商社の存在はありがたいですね。「2016/」によってこれまでになかったメーカー、商社の関係が生まれた気がします。